まくまく麻雀ノート
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動物好きのムツゴロウさんとして有名だった畑正憲氏。 実は雀士としてもその界隈では名を馳せていたことをご存じでしょうか? 日本プロ麻雀連盟初代十段位という実績もあり、正真正銘のプロです。 本書は、そんな畑氏の貴重な麻雀戦術書です。

現在流行りのデジタルでは、迷彩を施すことに批判的だったりしますが、畑氏は迷彩とは本質的に何かを一章まるまる(70 ページ以上)割いて論じており、捨て牌を工夫することを大いに楽しんだ打ち手だったことが分かります。 例えば、大物手を狙うとき、6p3p と切り出してしまうと他の色の待ちが透けてしまうので、8p3p と切り出せた方が望ましい(間四間で読んでくれる)、というように、相手からどのように見えるかまで考えて打っています。 だからこそ、捨て牌から相手の手牌を読む能力にも長けていたようです。

手筋の説明をした戦術書はたくさんありますが、小島武夫氏や阿佐田哲也氏との旅行中の議論などを取り扱っているのは独特で面白いです。

参考になりそうな読みの例

中張牌よりも端牌(1 や 9)が後から出てきたとき

先に 4p が切られているのに、最終手出しで 9p が切られたとき、ムツゴロウさんはこう読みます。

  1. 7p8p を持っている可能性が高い
  2. そこは愚形になっている可能性が高く、他の部分が先に埋まる可能性が高い
  3. よって、最終的にもその周辺の待ちになっている可能性があり、他の無筋を押していく価値がある

なるほど、愚形が残っているはずだから勝負していく、という考え方は勝負どころの判断基準に使えそうですね。 もっとも、9p6p のスライドなどはあるので、そのあたりのケアも必要になってきますが。

別の例です。捨て牌が 9p3z1m7z1m6z6p6m1p4s3s1m6m 以外が全部手出しのとき 、ムツゴロウさんはこう読みます。

  1. 6p の先切りで、ピンズの上はほぼないことがわかる
  2. 1p が後出しということは、ピンズの下の方の愚形があった可能性が高い
  3. そこが愚形であれば、多くの場合はリーチ宣言牌か直前で 1p が切られることが多い
  4. にも関わらず、今回は早い段階で 1p が切られているということは、その時点でピンズメンツは完成している可能性が高い(例えば、1p2p3p2p2p2p3p3p3p という形)
  5. よって、ピンズは通る!
  6. 一方で、ソーズのターツ落としが行われており、字牌に寄せた可能性がある(特に子で点数が欲しいとき)ので、3m とのシャボ待ちも読み筋に入る

中盤以降にポツンと 2 や 8 が出てきたとき

ペンチャン落としが間をあけて行われたとき、それは多くの場合カンチャン待ちからのリャンメンへの変化である。 例えば、9s8m1p7z6z1m7z2p2p 手出しとか、4z7z9p3z2m4s8p8p 手出しの場合に、3p4p5p6p というリャンメン待ちに変化した可能性は高い。

というのは基礎的な読みだが、この転化はペンチャン落としに限らず、2p8p が中盤以降にポツンと出てきた場合にも当てはまることが多い。 例えば、4z3z2m3s5s6s1p8m8p という 8p 手出しも、内筋には注意したい。

9 巡目以降のリャンメンターツ落とし

9 巡目以降に 4z9m9s2m8p3z-2p1p4s3s こんな感じでリャンメンが捨てられたとき、まずそれをまたぐリャンメン待ちを警戒した方がよい。

これは、現在デジタルでもよくなりますね。4s3s が離れて切られた場合はもっと確定的に 3s3s4s4s から一枚ずつ外された可能性が高い。

ムツゴロウさんのテンパイ形読み

とある専門誌の「捨て牌から相手の手牌を推理する」という企画にムツゴロウさんが挑戦しました。 下記が他家がテンパイしたときの捨て牌で、東三局南家で、ドラは 5s 、ツモ切りは 2s のみです。

1z4z1s6z5z7p2z5m2s

情報は少ないように見えますが、ムツゴロウさんは次のように読みます。

  1. 1z4z1s6z5z という河は手がかりが少ないが、「トイツ系ではなくピンフ系」であること、「チートイツではなさそう」ということが分かる。
  2. 配牌で孤立牌が 6 枚あったということは決していい手ではない。一方で、初手が役牌の 1z なのは妙だ。どうしようもなく悪い手なら 1z は万が一にでも親に鳴かれないように握りつぶすはずだ(現在のデジタルでは早めに 1z を処理する打ち手はいます)。ということは、孤立牌以外の残りの部分は十分に魅力的な形だったと読める。
  3. 仮にドラを持っていて、孤立牌が多い配牌だったら、これほど早く 5z6z を打ち出すことはないだろう。よって、ドラの 5s は手中にないだろう。
  4. 6 巡目の 7p 打ち。このような要牌は通常はとどめておきたいが、2z よりも前に切られている。4 〜 6 巡目は手牌の骨格を決めるときであり、6p7p7p7p7p8p からの切り出しが考えられる。孤立牌が多かったという事実を鑑みると、7p を含むメンツは完成したと思うべきだろう。例えば、7p8p9p ができたと考えることもできるが、用心するならば、5p6p7p としておくのが都合がよい。5p より上は安全だろう。
  5. 8 巡目に温存していた 5m が出てきたということは、マンズに何らかの変化が起きたということだ。このとき、河に 1m2m が複数切られていたので、5m7m9m あたりからの変化と読むのはどうか。マンズには上の方にメンツがありそうだ。
  6. 残り部分にはソーズがありそうだが、前述のとおり 5s はない。ということは、6s7s8s9s あたりだが、念のために 6s7s8s としておくのがよい。
  7. 消去法で、もう 1 メンツはピンズの下しかない。1p2p3p4p あたりのメンツができているか、作ろうとしているのだろう。このとき、たまたま自分の手に 1p がアンコであったので、2p3p と読んだ。リーチがきたなら、ほぼ 1p4p 待ちだろう。

かくして、ムツゴロウさんは、この捨て牌の相手は次のようにテンパイしているだろうと読みました。

5p6p7p7m8m9m6s7s8s2p3p3z3z

実際のテンパイ形は、若干のズレはありましたがほぼ的中と言っていい形でした。 普段からここまで深く読んでいる人がどれくらいいるでしょうか。

その他のムツゴロウさんの言葉

国士無双の迷彩について

国士無双は、相手の動きに寄りかかって打つことが可能。 だから、雀頭の早打ちなどして姑息な迷彩を施すより、対子を手中にため、オリているのか、いっているのかわからないように打ち、中盤以降のトイツ切り出しによって大役の完成を目指すのがよい打ち方である。 例えば、リーチがかかったときに、4z4z と切り出す。

麻雀は配牌だ!

ほんと、麻雀は配牌でものすごい差がつくゲームですよね。 まくは個人的には、麻雀は「席と配牌とツモだ!」って言ってます。えっへん。

たくさん小技を知れ!

ちなみに、雀鬼な桜井章一氏は、小手先の技には頼るなと言ってます。真逆だ。

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